歴史好きの私が、大河ドラマ「麒麟がくる」を好んで見ていたら、当時小3の息子も一緒に見るようになりました。
これをきっかけに息子が少し歴史に興味が出てきたようでしたので、学習漫画の「日本の歴史」を買って家に置くことに。
実は私が歴史好きになったのも、小学生の時に日本史の学習漫画を読んだことがきっかけでした。
今は出版大手各社から同ジャンルの漫画が刊行されており、比較検討して購入しましたので、各社どういう点が特徴で、どれがおすすめなのか記録しておきます。
(※改訂版など最新情報は随時、追記しています)
学習まんが日本の歴史を比較!小学館 集英社 講談社 角川 学研
学習まんが日本の歴史を9つ比較
種類/巻数 | 最新版 | 内容 | 価格 | |
小学館 | ソフトカバー A5判 全20巻 |
2022年 | 旧版が図書館に置いてあることが多く、長らく日本の歴史の学習まんがを牽引。直近の2022年に全面改訂のため、他社本には載っていないコロナ禍や東京五輪など最新の時事ネタもカバー。歴史書に定評ある山川出版社の編集協力が強み。 | 全巻 セット ¥19,360 |
集英社 | ハードカバー 菊判 全20巻+別巻1 |
2016年 | 巻によって監修者は変わるが、受験界の人気日本史講師・野島博之氏が総合アドバイザーとして全体を編集。8巻分を近現代史に割いている点も含めて、受験を強く意識しているといえる。 各巻のカバー画は、集英社の漫画で活躍する著名な人気漫画家が描いている。 |
全巻+ 別冊1 ¥23,540 |
ソフトカバー 四六判/同巻数 |
2021年 | 同上 ¥17,380 |
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講談社 | ソフトカバー 四六判 全20巻+1冊他 |
2020年 | 参入が最後発のため、最新の歴史学説を盛り込みつつ学校の授業とも乖離がない内容に仕上がっている。マンガとしてのクオリティも求めて人気漫画家が本編の画を執筆。監修には第一線で研究に励む若手研究者を多く起用。 | 全巻+ 特典 ¥18,700 |
KADOKAWA (角川) |
ソフトカバー 四六判 全16巻+4巻 |
2018年 | 監修は山本博文氏。全巻を一人で監修しているため、視点にまとまりがある。別巻3冊は近現代史を別途特集。近現代史を重視した学習まんがの先鞭をつけたとも言える。今の子に馴染みやすい画。 | 全巻 セット ¥20,900 |
学研 | ソフトカバー 全12巻+DVD |
2021年 | 学習参考書売上トップシェアの学研の歴史まんが。監修は大石学氏。歴史まんが史上初のDVD付きで、まんが+資料+映像の3本柱で楽しく歴史が学べる。現代のややキラキラ寄りの画風でフルカラー。 | 全巻+ 特典 ¥17,160 |
朝日新聞 | ハードカバー 全7巻 |
2010年 | 漫画はつぼいこう氏。当時の学習指導要領や教科書に準拠した「音読シート」「歴史用語書き取りプリント」「確認テスト」などもついているため、中学受験に強い歴史漫画として知られていたが、最新の学習指導要領には合致不足。 | 全巻 セット ¥21,000 |
歴史漫画 タイムワープ |
ソフトカバー 全14巻+別巻1 |
2018年 | 従来の歴史漫画は、歴史上の人物が活躍する偉人伝ですが、歴史漫画タイムワープシリーズは子どもたちが主役。読者と同じ現代の子どもたちが、各時代にタイムワープ(タイムスリップ)して、歴史を体験していく新しい形の学習漫画。 | 全巻+ 別冊1 ¥17,160 |
日本史探偵 コナン |
ソフトカバー 全12巻+α |
2017年 | 史実の勉強というより、名探偵コナンとしての歴史エンターテインメント漫画(小学館)。日本史現代から過去へと飛ばされた少年少女たち=タイムドリフターとコラボレーションして、古代から現代までの歴史を冒険していくストーリー。 | 全巻 セット ¥12,936 |
中公文庫 | 文庫版 全27巻 |
2020年 | 石ノ森章太郎氏が1989年から5年かけて描き下ろした漫画を、2020年に「新装版 マンガ日本の歴史」として再構成して出版。新装版時に新たな注釈や解説が追加されましたが、ベースは昔のまま。子ども向けではない。 | 全巻 セット ¥25,344 |
※四六判などのマンガ本のサイズ感をつかむには「マンガ本の大きさ(判型)を解説(漫画全巻ドットコム)」のページで。
中公文庫「新装版 マンガ日本の歴史」は子供向けではない、
朝日小学生新聞「日本の歴史きのうのあしたは」は版が古いまま、
日本史探偵コナンと歴史漫画タイムワープシリーズは、史実の勉強の基礎になるより読み物として楽しむものという内容ですので、
下記に記載する各社の詳細からは省いています。
学習まんがの日本の歴史の王道が小学館版
1981年の発刊以来、長らく「学習まんが 日本の歴史ジャンル」を牽引してきた一方、版が古いままだったので近年は人気が低下。
しかし2022年に全面改訂したことで本命に復活です。
史実に忠実で歴史の教科書に近いのが強み
歴史に強い山川出版社の教科書づくりに関わってきた、日本を代表する大学の研究者や歴史学者が専門分野ごとに監修を担当。
今の段階の歴史研究で正確と考えられる史実や信頼できる参考文献に忠実で、本当かわからない話は極力排除することで中高生の勉強に役立つ正統派というのが強みです。
2022年度から高校で必修科目となった、日本と世界の近現代史を中心に学ぶ「歴史総合」や、最新の学習指導要領を意識して全20巻中の9巻を近現代にあて、歴史用語を教科書の記述に統一。
※9巻分が近現代史というのは小学館のPRであって、一般的な基準通り明治維新以降を近代とすると他社と同じ8巻ですけどね。
図解を多くすることで、わかりにくい事柄、歴史の流れ、人間関係がビジュアルで理解できる構成になっています。
A5判は好みが分かれる
旧版のハードカバーから新版ではソフトカバーになったものの、サイズがA5判ということで小学生が手に持ちながら読むのはやや難しいです。
コンパクトではないので、手軽にカバンに入れて持ち運んで、空き時間にサッと読むようなことがしにくいのが弱点ですね。
また、小学生には難しいというAmazonのレビューがあります。

持ち運びのしやすさとストーリーの楽しさが集英社版
以前の小学館版や角川版は一人の研究者が全時代を監修しているのに対し、集英社版は、各時代の考証に強い専門家がその時代を監修しています。
最新研究を反映し歴史の魅力あふれるストーリー展開
気鋭の研究者が各時代の時代考証をおこない、新しい歴史認識を本の中に反映。
教科書にまだ載っていなくても、今後は重要度を増していくと言われている最新の学説にも言及しています。
本編まんがは、実績のある漫画家が、魅力あふれるストーリー展開で歴史をわかりやすくドラマチックに描いています。
その一方、受験界のカリスマ日本史講師・野島博之氏が総合アドバイザーを務めることで、必要な内容とそうでない内容をしっかり区別して編集。
受験でも頻出の近現代史を重視し、全20巻中8巻が近現代史です。
コンパクト版で、かつ、他社と比べて1冊あたり最も軽いので(約230グラム)、持ち運んで読むのに最適です。
ストーリー重視は諸刃の剣!?
カバーイラストは「週刊少年ジャンプ」はじめ、集英社各誌で活躍する漫画家(ナルトの岸本斉史氏やキングダムの原泰久氏など)が担当するも、本編は別の漫画家がほとんどで、カバー画の漫画をイメージするとギャップがあります。
ストーリーを重視することは、史実のみが淡々と書かれた教科書的ではなく主人公のいる物語になるということで、読んで面白い反面、歴史の史実の再現性からズレる可能性もあることに注意は必要かと。

後発参入の強みで各社のいいとこ取りの講談社版
講談社は、大手出版社の中で最後発の参入なので、ソフトカバーでコンパクト版、人気漫画家による本編執筆、新学習指導要領の準拠など、いいとこ取りができている印象。
情報量の多さと物語漫画の面白さを両立
総ページ数が4480ページで欄外のマメ知識が約3500本というのは、類書No.1の情報量。
だからこそ中学から大学受験まで使えて、記述式問題にも対応できるのが強みです。
歴史の教科書は最新の研究に合わせて更新されていくので、過去の権威者ではなく第一線で研究に励む若手研究者が、それぞれ専門の時代を監修し最新の研究結果を反映。
カバーと本編の漫画家は同一なのでしっくりくるとともに、講談社の「週間少年マガジン」はじめ、メジャー漫画誌での連載経験のあるベテランが、表紙から中身まですべて描き下ろしています。
巻ごとの記事ページはフルカラーで、衣食住、交通、経済などテーマに沿って豊富な資料と解説文が充実。近現代史は6巻分。
情報量の多さが初学者に難しく感じることも
各巻冒頭のフルカラー記事ページが、学習参考書レベルの内容なので入りのとっつきにくさはあるかと思います。
情報量の多さは勉強に役立つ反面、ともすれば詰め込みでまんがの展開が忙しくなります。
それもあってか、小学生には難しいというAmazonのレビューがあります。

世界と関わる近現代史に強いKADOKAWA(角川)版
ソフトカバーのコンパクト版と近現代史に力を入れたという点で、今主流の学習まんが形の先鞭をつけたのがKADOKAWA(角川)版です。
近現代に力を入れて2022年には最新1冊の追加も
16巻のうち5巻分が近現代史で、さらに別冊で全3巻を「よくわかる近現代史」として刊行。(計8巻相当)
学習まんがでの近現代史重視の流れは角川の功績が大きいです。
この「よくわかる近現代史」が優れているのは、日本史と世界史を織り交ぜて構成している点。
ともすれば繋がりを理解しにくい日本史と世界史が、一つの流れですらすら読めるので秀逸です。
監修は、追加の第16巻以外、東京大学教授の山本博文氏が全巻担当。
氏による「歴史の大きな流れをつかむ」技法に基づき構成され、まずはその時代の特徴がひと目で分かるイラストが入ります。
また、その巻に登場する主な人物が一堂に会する「人物相関図」を冒頭につけたのも角川が先駆者。これが、読みすすめた時の内容の理解に役立ちます。
分かりづらいという感想もある
Amazonレビューでは他社のほうが読みやすいという感想も散見されます。
監修者が1人という角川版の特徴が、監修の方向性と合わない読者には読みづらく感じてしまうのかも知れませんね。

オールカラー+DVD付きのビジュアルで他社と一線を画す学研
オールカラーの漫画+各巻に資料映像やオリジナル映像が入ったDVD付きという、他社とは大きく異る魅力があるのが学研版です。
まんが+資料+映像の3本柱
全ページがカラーで、各巻に対応するDVDがついているという視覚に訴える強さに秀でている学研まんがNEW日本の歴史。
オールカラーというのはやはり現代っ子には好まれます。
巻数は12巻と少ないですが、新学習指導要領に対応した巻末の詳しい歴史資料で学校の勉強の内容もカバー。
総監修者は、NHK大河ドラマで何度も時代考証を担当した日本近世史学者の大石学氏。
そのため、当時の歴史の現場が伝わるNHKの貴重な資料映像もDVDに収められています。
DVDには楽しく歴史を知ることができるクイズや、まんがの登場人物が動いて話すアニメーションなども入っており、歴史を学ぶハードルの高さを感じるお子さんには、先にDVDを見せて興味を持ってもらうアプローチも良いかと。
全12巻だと詳しくは知れない
他の大手出版社が20巻が基本となっていることと比較すると、どうしても詳しさの点では劣ります。
ただ、20巻あっても本格的に受験勉強するには、最終的には教科書や参考書を読む必要はある訳です。
となると、歴史に興味・関心をもってもらうきっかけのためと割り切ってしまえば、12巻でもいいですよね。

結局どれがいいの?比較と選び方 まとめ
漫画としての見やすさと絵柄で選ぶ
各社のおすすめポイントを記載してきましたが、結局は、自分またはお子さんに合う合わないは、本を開いて中を見ることが重要です。
というのも、漫画部分の文字の大きさや文字の密度、フォントの違いなどで、自分にとって読みやすいかどうかが、思った以上に異なるからです。
角川 > 小学館 > 講談社 >集英社
上記の左に行けば行くほどが文字が大きく密度が低くなりますので、内容やストーリー展開は別にして、見やすさという点で小学生にもとっつきやすいと言えます。
※密度が低いから内容の情報量が低いとは限りません。ページ数で補うなどが可能だからです。情報量は上で記載した各社の特徴を参考にしてください。
文字の大きさ | フォント | |
集英社 | 細かい | 細い |
講談社 | 細かい | やや太 |
小学舘 | 中ぐらい | やや太 |
角川 | 大きめ | 太い |
ちなみに、大きさや密度に加えてフォントも合わせて見た場合、私の好みで読みやすかったのは小学館と講談社でした。
また、まんが本編の絵柄が気にいるかどうかも非常に重要なポイントです。
集英社、講談社、角川は、巻ごと(又は複数巻ごと)にまんが本編を描く人が異なります。
これは、子どもが気に入った絵柄の巻ばかり読み、好きでない絵柄の巻は読まないという可能性も出てくる訳です。

ざっと、作画者がバラバラな各社に目を通した印象だと、講談社が一番あるていど絵柄の方向性が統一されていると思います。
絵柄が対象的なのは小学館と角川です。
小学館がオーソドックスで、ややクラシカルな絵柄なのに対して、角川は漫画家が巻ごとに異なりますが、全体的にエッジが効いた現代的な印象の絵柄。
集英社や講談社はその中間の感じですね。学研は逆に、1番キラキラ風の現代的な絵柄と言えます。
オーソドックスな絵柄と現代的な絵柄ではかなり好みが分かれますので、選ぶ際にはぜひ、中身をパラッとでも眺めてみてください。
監修者が1人か複数か
監修者が1人だと歴史を見る視点に統一性があるので、巻ごとのつながりも見えて時代がどう流れているのか捉えやすく、子どもにも読みやすいでしょう。
その一方、登場人物に対する監修者の見方によって、良い人物と悪役的な人物という形で描かれやすいということも出てきます。
たとえば、基本的に全巻同じ監修者の角川ですが、Amazonのレビューで「印象操作・作者の主観・勧善懲悪」といった感想が複数あがっています。
画も、悪役的な人物はいかにも悪そうに描かれることがよくある。
一方、監修者が複数の場合は、その時代に詳しい学者や研究者が担当することで、専門性が高くなります。
たとえば、複数監修者の講談社の情報量が多いのは、各時代を専門性が高い方が担当したから自然と情報量が多くなったということはあるでしょう。
ただ、巻ごとに歴史の視点にばらつきが出やすく、各巻は読みやすくても巻をまたいだ際の時代のつながりを把握するのに、少々理解力が必要になります。
ウチは講談社版をメインで読んでいたので、なるほど言われてみればそうだと思ったのですが、
人物の描き方ということでいえば、講談社版では歴史上の人物を少なくとも悪人としては描いていないのが特徴です。
引用:大手5社が大競争「学習まんが日本の歴史」はどれを買えばいいのか中学受験の人気講師が徹底比較(馬屋原 吉博氏)
ということ。
これは、善悪を他人(監修者)の視点で決めつけられずに読むことができる、なかなか重要なことかと感じます。
立場や視点が変われば、善者・悪者は入れ替わります。
そういったフラットな視点を子どもには持ってもらいたいと、個人的には思っています。
※ウチは講談社版を購入しました。
学習まんが効果で日本の歴史が好き&得意になった!
私は歴史好きで、城や神社仏閣を巡ったり、各地の背景や歴史などを知ることを面白く思っています。
思い起こせば、学生時代のテストの得点源は日本史でした。
そのきっかけとなったのは、小学校の教室に置いてあった学習漫画の「日本の歴史」を読んだこと。
男の子にありがちだと思うのですが、戦国時代に興味を持ったのがきっかけでしたね。
このページの記事を書くにあたって調べてみたら、当時読んでいたのは小学館の「日本の歴史」と判明しました。
この絵柄を明確に覚えていたんですよね。
とくに武田信玄、豊臣秀吉、徳川家康はこの顔と絵柄が未だに頭にインプットされています。
最後に、日本の歴史に関する記事のページということで、
出版大手各社が「学習まんが日本の歴史」に参入した背景・歴史をかいつまんで記載して締めたいと思います。
学習まんが日本の歴史に出版大手各社が参入した背景
全国模試の偏差値が30台だった高校2年生のギャル・さやかちゃんが、慶應義塾大学の一般入試で現役合格するまでになった実話をもとにした小説「ビリギャル」。
この本の中に出てくる学習漫画を使った勉強法で、著者の塾講師の坪田信貴氏が推奨していたのが小学館の「学習まんが 少年少女日本の歴史」でした。
2014~15年頃のビリギャル大ブームに合わせて、日本史の学習漫画を出版各社が刊行。
KADOKAWA(角川)が2015年に参入し、集英社は2016年に既刊を全面刷新します。
また、2015年以降、中学受験者数が右肩上がりに増え 「第3次中学受験ブーム」とも言われるようになっていく中、小学6年生で学ぶ歴史に強くなるために、中学受験する子どもに学習漫画を読ませる親御さんも増えました。
その受験ブームに乗るようにして、講談社が創立90周年に合わせた2020年に「学習まんが 日本の歴史」を刊行して参入。
さらに2022年には、長らく古い版のままだった小学館の「学習まんが 少年少女日本の歴史」が、小学館創立100周年企画として全面改訂。
ここに出版大手各社の「学習まんが 日本の歴史」が新たに出揃ったのです。
日本史さながら、まさに群雄割拠の学習まんが戦国時代に突入ですね!